1963年、東宝東京映画作品。
谷崎潤一郎晩年の同名随筆は既読。ビデオにもDVDにもなっていなかった本作をニュープリントで観られる又とない機会に駆けつける。
女中、と呼べなくなってお手伝いさん、と呼ばれる時代、即ち戦後間も無くから昭和38年までを言葉の言い換えと共に変わりゆく日本の女性像を描く。
東京映画だからか、谷崎の芦屋時代をオミットして京都時代をセットで、伊豆時代をロケとセットで見せる。
その戦後間も無くの頃の谷崎邸の女中は乙羽信子、森光子、京塚昌子。
乙羽の逞しさ、森の二枚腰、京塚の純真とすっとぼけた可愛らしさ。
結婚後の乙羽が土佐の港で子供達と共に夫の鰹漁船に手を振る横移動がイイ。
テンポよくトントンと進み、昭和30年代にやって来た二人のお手伝いさんは水谷八重と淡路恵子。物干しに干した毛布越しのこの二人の妖しい関係の見せ方の巧さ。
そして淡路恵子の快心の突き抜けっぷり。テレビのミタさんなんざ秒速でぶっとぶ凄み。
やがて特急つばめが西から東へ走り、北九州から伊豆にやって来たのは大空真弓と団令子、そして池内淳子。
恋愛がオープンになった時代を表すかのように小沢昭一と三木のり平が現れてさや当て。団令子の上昇志向とその挫折、九州女のパワフルぶりが素晴らしい。最後の最後にやって来たのが歌う中尾ミエ。すぐ退散でこれにてお手伝いさんの時代は終焉。老境の森繁と淡島千景の二人三脚、「アパートに移ろうか」。戦後社会の移ろいをワンシーンで見せ切った。
とにかくテンポが良い、上質のコメディにしてエピソードを繋ぐ脚本のお手本。映画が豊かだった時代の最後の真珠の一粒。
傑作、見逃すと損。