映画的日乗

映画、食、人。西に東に。

「丼池」監督・久松静児 at シネ・ヌーヴォ

www.cinematoday.jpシネ・ヌーヴォの特集上映最終日に滑り込む。

プリント状態は良くない。劇場は満席、入場出来ないお客もいた。
「おちょやん」人気か。

 1963年宝塚映画。東宝の宝塚撮影所で製作された。今では考えられない豪勢なセット。思えば往事の丼池の問屋街でロケなど出来ようもないだろう、全て撮影所内にセットを組んでいる。

 設定は昭和27年(1952年)、まだ戦後のどさくさ感があり、街金が勝手に債券を発行するなんて無茶もありうる時代だったのか。あれじゃ豊田商事だ。

原作・菊田一夫、脚本・藤本義一、大阪商人の金勘定のがめつさをリアルなデイティールで書き分ける。

 その象徴が三益愛子の金貸し婆さんと、そのやり口を受け継ぐ司葉子の街金会社社長。そしてこの二人に女の性だけを武器に成り上がる料亭の女将、新珠三千代

 更に脇を固めるのは口から出まかせで立ち振る舞う森光子、そして戦後のどさくさをど根性だけで生き抜いたような我らがおちょやん浪花千栄子。溜め息が出るほど惚れ惚れと巧い演技合戦である。久松監督もこの丁々発止のやり取りをあまりカットを割らずどーんと撮る事だけに専念しているように見える。

 一方男の方は大抵情けなく、女の勢いになす術もない。中村鴈治郎はここでも色惚けで財を失い、色男佐田啓二鴈治郎に逆らえず、司葉子には優しいだけで何も出来ない。例外は山茶花究、登場と同時に場を攫う圧倒的存在感。

 戦争直前で終わる谷崎の「細雪」では大阪船場の「糸へん」の没落が描かれていたが、それが戦後どうなったかがここにある。冒頭の問屋の破産、司葉子の父親の自殺、そして鴈治郎の店の末路。

 ラストはそれまでのドライなナニワ金融道が急に甘々になる。この辺が明るく楽しい東宝映画の限界か。藤本義一がのちに書きまくる大映や日活の川島雄三監督ならもうひと泡吹かせる展開だったかも。

 が、しかしこれだけぎゅうぎゅうに金を巡る女の闘いを笑いとアクションで見せ切るオモロイ映画が‥‥もう日本ではつくれない。