映画和日乗

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「エンテベ空港の7日間」監督ジョゼ・パジージャ at シネリーブル神戸

国際ファッション専門職大学大阪キャンパスで講義。

www.focusfeatures.com  1976年に起きたエンテベ空港事件、中学生だった私にはライブ感覚で記憶している。その後直ぐに映画化(本編そのものはテレフューチャー)された「エンテベの勝利」('76)の公開打ち切りにもまさしく遭遇している。確か神戸での公開は新開地の聚楽館だったはず。事件の同じ年に作られて公開されているところを見るとイスラエル資本の肝いりで急拵えした再現フィルムみたいなものだと推測される。続いてチャールズ・ブロンソンが主演した「特攻サンダーボルト作戦」('77)があるがこれも未見。機会があれば観てみたい。

 さて、事件から40年以上経って映画化された理由はいざ知らず、これまでの映像化作品と一線を画すのだという作り手の意思はファーストカットから充分伝わって来る。コンテンポラリーダンスと日本の和太鼓のような単純なリズムを叩きつける音楽の融合。のちにこのダンスの中で一人だけ違う動きをする女性が、ハイジャック犯と戦うイスラエル軍の一員と恋人関係にあることが分かる。エールフランス機を襲ったハイジャック犯の主犯はドイツ赤軍のメンバー二人(ダニエル・ブリュールロザムンド・パイク)。「バーダーマインホフ」('08)という何の因果かこれもまた日本公開が出来なかった映画があったが(DVDは出ている)、二人はこの一員である。ドイツ赤軍PFLPに加担してこのハイジャックを実行するも所詮観念が先行してしまった学生である、遭遇する事態に冷静に対応できず狼狽える。

 ウガンダエンテベ空港の建物内に押し込められた人質の一人の老婆がユダヤ人だけ別室に移動させられる段に奇声を上げて「助けてくれ」とお札を振りかざす。収容所の経験がある人なのだと察知できるが、ダニエル・ブリュールが彼女の腕に刻まれた数字の刺青を見て、イスラエル=ユダヤ人と戦いながら、この収容所体験のあるユダヤ人に同情し、ドイツの罪を省みる。観念先行の象徴的な事態である。

 一方、イスラエル政府側。「おみおくりの作法」('13)では朴訥な公務員を演じていたエディ・マーサンがここでは老獪な国防大臣ペレスに扮していて名演。ペレスと対立する穏健派のラビン首相(リオー・アシュケナジ)はサンダーボルト作戦には懐疑的だ。結果的には成功するこの作戦、ラビンの苦悩混じりの台詞が印象的。パレスチナとの対話を拒み、戦い続けるならば「この戦争は終わらない」。作戦そのものの描写はスローモーションの多用とコンテンポラリーダンスのカットバックで淡々と、あっさり描かれる。勿論、意図的なものであろう。今更戦争アクション映画のジャンルには組み込まれまい、と。

 過去のエンテベ事件の映像化と比較するより、やはりスピルバーグの「ミュンヘン」('06)のイスラエルパレスチナのより峻厳な闘いと絶望の暗澹を思い起こさざるを得ない。


Echad Mi Yodea by Ohad Naharin performed by Batsheva the Young Ensemble