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「1917 命をかけた伝令」監督サム・メンデス at OSシネマズ神戸ハーバーランド

www.imdb.com エンドクレジットで本作が監督サム・メンデスが祖父から聞き齧った第一次世界大戦の従軍物語からインスパイアされてつくられている事を知る。プロデュース、脚本共にメンデスが兼任、並々ならぬ意欲で製作されているのもそういった理由からであろう。増して、それを2時間1カットのように見える様に撮っている。途中で気がつくが、2時間1カットなら2時間の出来事の筈だがそうはなっていない。日を跨いでいる。

 通信手段の限られている19世紀、有線がドイツ軍によって寸断されてしまった英国軍は敵軍陣地後方に構える英国軍大隊に翌日に控える総攻撃を中止するよう伝えるべく兵士二名を伝令として派遣する。この二名のうちの一人、ランス上等兵(ディーン・チャーリーズ・チャップマン)は兄がその大隊に所属している為、戦死を未然に防ぐ意思がある。しかし道中ランスは悲運の戦死、もう一人の上等兵スコフィールド(ジョージ・マッケイ)に任務が託される。

 英国が誇る名優達が「序」「破」「急」の要所に登場する。まさしく物語を締める役割。「序」で攻撃中止指令を伝令に託す将校にコリン・ファース、ランスの戦死のあと、たった一人になってしまったスコフィールドを援助する将校にマーク・ストロング、そして彼がようやく辿り着いた大隊司令部の将校にベネディクト・カンバーバッチ。長年映画を観てきた結論だが俳優のレベルは英国が世界一だ。惚れ惚れする。

 アクロバティックな長回し映像が戦場のリアリズムからシュールへと切り替わる瞬間がある。川の濁流から生還し、疲労困憊の末森に迷い込んだスコフィールドが耳にする一人の兵士の歌声。その歌詞にあるヨルダン川で聖書を意識させるメンデス監督、それを合図にスコフィールドの行動が神がかる。塹壕を飛び出しても決して弾に当たらないスコフィールド。そして大隊が横移動で突撃、それを縫って縦に走るスコフィールドの軌跡、いや奇跡はそこに神の加護を感じざるを得ない、そんな訳ないというリアリズムを封じ込める確信犯的演出という意味に於いて。

かの歌、検索したら米国の歌だとか。

www.classicfm.com  佳作、お勧め。