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「KCIA 南山の部長たち」監督ウ・ミンホ at 神戸国際松竹

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 映画冒頭、事実に基づいたフィクション、と但し書きが出るが、1979年の朴正煕暗殺事件を巡る政治ドラマ。ぼんやりと知っていた程度の事件だが、映画の最後に出て来る実際の現場検証の写真は記憶していた。↓これ

president.jp 1961年の大韓民国軍事クーデーターを朴正煕とその側近達は革命と呼ぶ。

 その時に一緒に行動した論功行賞でKCIAの情報部長となった金載圭(イ・ビョンホン)とクァク・サンチョン大統領警護室長(イ・ヒジュン)の権力闘争がストーリーの主軸。尚、史実を検索してみると警護室長は実際は車智澈(チャ・ジチョル)という名前。

車智澈 - Wikipedia

 事情があっての変更だと推測される。本編では相当直情径行であまり賢そうには見えない粗暴な感じだ。

 智略を働かす冷静な金とその正反対のクァクを意識的か無意識的分からないが朴大統領は「お前の側には俺がいる。好きなようにやれ」と同じ台詞を囁いて忠誠競争を焚き付ける。

 朴大統領の豪奢な隠れ家飲み会。呼ばれた金に朴は日本語で「あの頃は良かった」と言い、鸚鵡返しに同じ事を言う金。共に旧日本軍に在籍していた事が絆である事を示すのだが、朴はコロコロ態度を変えて金を遠ざけクァクを重用したりする。ジリジリと嫉妬する金。まるで恋愛の三角関係である。

 朴に嫌われKCIAを辞めて米国議会で朴政権のスキャンダルを暴露するパク(クァク・ドウォン)は金の盟友だが、金は朴への忠誠心からクァクより一足先にパクを暗殺する。

 米国ロケ、フランスロケではカーチェイスも銃撃戦もちゃんとみせてくれる韓国映画。日本映画と何が違うか一目瞭然である。

 ミンホ監督はフルショットを多用、イ・ビョンホンの甘い男前ぶりを封印している。「陸軍中野学校」シリーズの市川雷蔵ばりのポーカーフェイス。もしかして参考にしたのかな。


Nakano Spy School (陸軍中野学校 / 1966)

 国内の政情不安で制御不能に陥った朴大統領を殺すに至る金。単なる義挙ではなく「あんなに僕尽くしたのに」というオトコゴゴロが漲る。

 暗殺者の心情はともかく暗殺前後の行動は史実通りのようだ。そして機に乗じて全権を掌握するのは朴大統領の前でずっと昼行灯のような軍人だった全斗煥

 金載圭、夏草や兵どもが夢のあと。

 頭から尻尾まで緊張感が途切れない、観終わってどっと疲れる程だ。佳作、お勧め。

朴正煕、最後の一日―韓国の歴史を変えた銃声

朴正煕、最後の一日―韓国の歴史を変えた銃声

  • 作者:趙 甲済
  • 発売日: 2006/05/24
  • メディア: 単行本