映画和日乗

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「BAD LANDS バッド・ランズ」監督・原田眞人 at 109シネマズHAT神戸

bad-lands-movie.jp

 2021年の暮れにこの映画の滋賀県・琵琶湖競艇場ロケにお邪魔している。

その時の一枚

 仁科貴扮するタクシー運転手が刑事達に証言するシーン、本編を観てようやく前後の繋がりを把握した。その時は丁度お午前の撮影で、このシーンの撮影準備中、原田監督から「この辺にメキシコ料理屋ないか」と無茶ぶりされたのを覚えている。この方はよく私にレストランのことを訊いてくる。

 また私の「フィリピンパブ嬢の社会学」主演の前田航基からも本作に出演していることを聞いていた。

 そんな訳で公開をとても楽しみにしていた本作、御歳73歳(撮影時は71歳か)とは思えぬ快走疾走ぶりに感嘆する他ない。

 キネマ旬報の監督インタビューによると原作の舞台である大阪西成はむしろ綺麗になり過ぎていて、「燃えよ剣」(2021)のロケ地、京都彦根が中心になったようだ。とはいえ西成の、新今宮駅あたり、動物園前駅あたりも少し出て来る。田中登神代辰巳のロマンポルノ作品でのロケ地の時代からすると確かに大阪も「清潔」になってしまったのかも知れない。

 が、そういう郷愁とは無縁に特殊詐欺のシステムを丁寧に描き、周到に伏線を張って大金強奪サスペンスが蛇行して行く。追う官憲側、刑事役の吉原光夫が素晴らしい。またヒロイン・ネリ(安藤サクラ)を助ける曼荼羅(宇崎竜童)が抜群。宇崎竜童という人、東京の人なのに何故か上方ものに縁がある。「曾根崎心中」('78)、「TATTOO【刺青】あり」('82)、「罪の声」(2020)‥‥とここまで書いてwikiを見たら元々ルーツは御両親共に関西だった。なるほど。

 そして後半、まるで紅白歌合戦の大トリをつとめるかのような天童よしみの登場。統御された演出から唯一はみ出す自然体。原田映画で笑うことは稀有なのだが、クスッと可笑しい。

 ラスト、見事な伏線回収と共に疾走するネリの横顔が朝焼けに照らされるショットにゾクっと来た。映画的興奮ここにあり。佳作、お勧め。 

そして我らが「フィリピンパブ嬢の社会学」ファミリーも奮闘していて嬉しい。