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「燃えよ剣」監督・原田眞人 at TOHOシネマズ西宮OS

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moeyoken-movie.com  原作は未読。

 度重なる公開延期でやっと今秋の公開となったが、撮影は2019年の春。

 私は畏兄原田監督のご好意で彦根のオープンセットでのロケをじっくりと見学させてもらっていた。

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 遅ればせながら本編を観て、私が現場で見ていたのは山崎烝(村本大輔)が薬問屋に化て池田屋に潜入するシーンだった事が分かった。

 という訳であまり客観的にこの本作について感想を述べられないが、中世から近代の日本史は映画からの知識が殆どの私には大島渚監督「御法度」('99)以来の新撰組おさらいとなった。

 冒頭は髷を落として洋装の土方歳三(岡田准一)で、ひとり語りの回想から始まる。駆け足での江戸末期の説明も分かりやすく、大政奉還を女中衆の噂話風に納めてしまう手練も見事。

 音楽(土屋玲子)は何とビゼーのアレンジ、またそれにちなんでか新撰組内でカルメン風のダンスが流行っているというお遊び。黒澤明「用心棒」('61)の芸妓達の奏でる音楽と踊りを想起した。

 古典西部劇を敬愛する原田監督としては拳銃を振りかざして突撃する土方のショットは「夢」だったのかも。またキネマ旬報の監督インタビューによると、ラスト近くで土方に尋問していたフランス人は自身が役者として出演した「ラスト・サムライ」(’03)のモデル(トム・クルーズの役の事か?)とのこと。

 幕末モノ、新撰組好きに通底する「男の子の好きな世界」は要はプライドを賭けたマチズモのマウントの取り合いである。局中法度もヤクザからマフィアから半グレに至るまでギャングの掟と変わらない。原田監督は耽溺せずにそこを引いた目線で捉えている。

 柴咲コウが良い。ヒタヒタと静かな想いが燃える時のその表情に見惚れる。燃えていたのは剣ではなく恋だった。