3年前「みとりし」のプロモーションで渋谷のコミュニティラジオに出演した時、仁科貴氏に紹介して貰ったのが本作主演の尚玄氏だった。
この時、これからフィリピンで映画を撮る、という話しを彼から聞いていた。
コロナ禍となり、何度かフィリピンでの撮影状況などメッセンジャーでやり取りをした。
そして、完成・今月公開。
幼少期に事故で片足を失った男がプロボクサーを目指す。日本国内ではプロライセンスが下りないのでフィリピンに渡って修行を積むというお話。
2009年にカンヌ監督賞を獲った経歴を持つメンドーサ監督は手持ちのデジタルキャメラをノーライトで振り回すドキュメンタリータッチ。その臨場感と緊迫感は見事で、漁港での荒くれ漁師同士の喧嘩も仕組んだ芝居のようには見えない(いや仕組んでいる筈なのだが)リアリティ。
が、ナオ(尚玄)と母(南果歩)の家族のシーンになると途端に琴の音に乗せた「イメージとしての日本」となりキャメラも大人しくフィックスになる。時にそれが回想で挟まれるのでせっかくのヒリヒリした臨場感が寸断される。
実話を基にしていることは自明ながら(ナオの義足を取った足は恐らく実話の主の足だろう)、脚本はやや単調。然は然りながら主演・尚玄の眼力と肉体が物語る、熱き情熱で見せ切ってしまう。