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「午前4時にパリの夜は明ける」監督ミカエル・アース at シネリーブル神戸

Les passagers de la nuit | Nord-Ouest

映画『午前4時にパリの夜は明ける』公式サイト

 

 1980年代のパリ、大統領選挙に沸く若者達、あの頃の甘くてダサいメロディ。実景のカットになるとスタンダードになる画角。ビデオ画像と16㎜撮影を混在させどっぷりとあの時代へと浸ることが出来るルック。

 まして舞台はラジオ局。それも人生相談の番組。専業主婦で子育てに勤しんでいたエリザベート(シャルロット・ゲンズブール)、夫が浮気して出ていってしまい見つけた働き口がラジオ局。ここのDJヴァンダ(エマニュエル・ベアール)は「看板背負ってる」プライドの塊なところが面白い。

 人生相談に電話をしてきた少女タルラ(ノエ・アビタ)を引き取ったエリザベート、で、あとはフランス映画らしい恋模様がいくつかあるだけのお話し。なのだがそれが悪くない。ロメール「満月の夜」('84)へのリスペクトも心地良い。

 エリザベートの過去の病気に対する新しいパートナーの心遣い、孤独なタルラへの周りの優しさ。日本もアメリカもそうだがやはり1980年代は今に比べて「衣食足りて」の余裕が感じられる。

専業主婦がいつの間にかDJをつとめているのもご都合主義だとは思ったが、同じ頃日本では女子大生がテレビやラジオで跋扈していた事を思うと、そんな時代だったかと思い直す。

 「まるく納まる」どうという事のない話しだが時代の空気を丁寧に描いていて気分良く映画館をあとに出来る。