映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「日本殉情伝 おかしなふたり ものくるほしきひとびとの群」監督・大林宣彦 at シネマヴェーラ渋谷

 

1988年の作品。ヴェーラの「大井町武蔵野館になってみた!」プログラムの一本。

フィルム上映。劣化はそれほどでもない、アグファフィルム特有の赤味も残っている。

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 大林作品の順番としては「漂流教室」('87)の後、「異人たちとの夏」('88)の前となっているが、中森明菜主演、長谷川和彦監督作品の併映作として企画されていたらしく、だとすると1985、6年前後に撮影されていたと推察する。

 竹内力は今でこそ「ミナミの帝王」だがこの当時は爽やか二枚目、奇しくも高利の金貸しの役は三浦友和。その同期の櫻、ヤクザの親分の息子に永島敏行。

尾道が舞台、時代設定はよく分からない仮構で塗り固める、むせかえるような大林節。

話は夕子(南果歩)という女を巡る三人の男の争奪戦。1秒12コマ撮影(普通は24コマ撮影)で1930年代のサイレント映画風の動きを表出させる。今では絶対撮影できないロリコン趣味も満開で怖いくらいだ。

呆れるほどの個人映画への帰還、棒立ち棒読みの素人然とした女優や地元民を起用しているのもその矜持の現れ。一旦中止を余儀なくされながら蘇った企画らしいが、大林宣彦濫作時代の妖しい徒花。