傑作「フロリダ・プロジェクト」(2018)のショーン・ベーカー監督最新作。
今回の舞台は2016年のテキサス州、油田地帯。
訳のわからないお調子者がバスに乗ってやって来るところから始まる。「パリ、テキサス」('84)が脳裏をよぎる。IMDbによるとロケ場所が一致した。
Filming Location Matching "Galveston, Texas, USA" (Sorted by Popularity Ascending) - IMDb
そしてルックが気になって仕方がない。16㎜か?いやところどころベイカー監督お得意のi phoneぽい手ブレ感もある。これもIMDbによるとスーパー16㎜だった。それも古いアリフレックスSR3。独特のざらつきと美しい夕景にこだわったロケーションが素敵だ。そして前作に続いて妙に明るい色彩。アイスクリームのような、いやストロベリードーナツのような、か。
どうしようもない人々ばかりが出てきて、金がなくて暇を持て余す日々が描かれる。
マイキー(サイモン・レックス)は元AV男優。仕事が無いのかしくじったのか、車も売り払ったのか、無一文で妻の実家に戻って来る。この妻(ブリー・エルロッド)も元AV女優であることが観ているうちに分かる。P.T.アンダーソンの傑作「ブギー・ナイツ」('97)でドン・チードルが起業する為に銀行に融資を求めるが元AV男優というキャリアのせいで融資を受けられないというシーンがあったが、本作のマイキーもことごとく就業を断られる。
「ブギー・ナイツ」の人々は懸命に生きようとする悲哀があったが、本作の人々はユルい。見事に何もしない。マイキーはマリファナ売り、妻はどうやら売春をしているようだ。彼らがしきりにテレビでドナルド・トランプの選挙の動向を気にしているのを観るとなるほどこういう人達が支持層を形成しているのかと思う。
それと私の英語リスニング能力からすると登場人物がみな実に分かりやすい英語を話す。つまりそんな中学生レベルの言語なのだ。
マイキーが泡銭を稼いで家族をドーナツショップに招待する。そこで出会う17歳のストロベリー(スザンナ・サン)がとんでもないビッチでマイキーと意気投合する。スザンナ・サン、よく見つけてきたなベイカー監督。ちなみにこのドーナツショップ、検索したら実在した。
マイキーに私淑する隣人ロニー(イーサン・ダーボーン、素人だそうだ)も凡そ賢くない。すぐにバレそうな軍歴詐称というのもなんだかな、で最終的にはマイキーのせいで事故を起こし人生を棒に振ってしまう展開。ただ、この事故のシーンはご都合のよろしい編集になっている。
それにしても、いやどうするんだというほどユルい展開なのに観ていられる。ラストの「希望的妄想」もとことんアホや、とむしろ喝采。
因みにタイトルのRed Rocket、どこにも赤いロケットが出て来ないのでなんなのだろうと調べたら、
犬のちんこ、とな。なるほどそう言えば太々しい犬が出て来る。しかしこれは恐らく後半の夜のフルチン走のことを指すのだと想像する。
タイトルまで脱力。
佳作、よくこんな企画が通ったなと天晴れ。