昨年、「午前十時時の映画祭」のラインナップが発表された時、これは観なければと決めていた。
学生時代しばしば名画座にかかっていたのに何故か見逃している名作が何本かある。
映画は常に一期一会である。
シャッツバーグはリアルタイムでは「スーパーカーフェラーリ/青春の暴走」('76)から。「恋人ゲーム」('85)はちょっと良かった記憶が。
そんなシャッツバーグがカンヌグランプリを獲ったのが「スケアクロウ」。
キャメラは後に巨匠となるヴィルモス・ジグモンド。本作も終始ロングショットの長回しで芝居を捉え、冴え冴えとデンバーの風景を切り取る。
アル・パチーノはキャリアとしては「ゴッドファーザー」('72)の後、ジーン・ハックマンは「フレンチ・コネクション」('71)の後で、この次が「カンバセーション/盗聴」('74)。
ああこの時代のアメリカ映画のなんと豊穣だった事か。
寂しい男二人の道行き。
約2,050㎞、こんな距離か。
ライオン(アル・パチーノ)は同性愛のように見える。マックス(ジーン・ハックマン)が妹の友人と親密に話し始めると、視界に入るように大袈裟な身振りで廃材を運ぶ。
妻子を捨てて家出しているのも理由が描かれないが、そういうバックボーンがあるからか。
喧嘩沙汰を引き起こして労役刑で農場へ送られる二人。
農場の牢名主(リチャード・リンチ)は見るからにゲイ、ライオンを依怙贔屓した上で襲う。
ライオンの願い、それは子供の誕生日にプレゼントを渡す事。
会うのを拒否されるのが怖くて事前に電話する事ができない。
ようやく辿り着いたデトロイトの我が家。素直に訪ねる事が出来ないライオン。
そしてその結末は苦い。置き去るプレゼント、素晴らしいショットに涙が出かかる。
ラストの唐突さもセンス抜群だ。何だろうなぁ、やっぱり心に刺さるのはこの時代のアメリカ映画だ。
アレサ・フランクリンの"You Me Feel Like A Natural Woman"が沁みて仕方がなかった。
アメリカン・ニューシネマが限りなく愛おしい。