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「修行」監督・錢翔 at シネリーブル梅田

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第17回大阪アジアン映画祭「台湾:電影ルネサンス2022」の一本。

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 監督の錢翔は前作「廻光奏鳴曲」(2014)で名を馳せ、主演した陳湘琪は金馬奨主演女優賞受賞。


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 7年ぶりの新作となった「修行」でもこの陳湘琪が冷め切った夫婦関係に耐え、倦んでいる主婦を演じる。

 錢監督は撮影も兼任、手持ちのようなグラグラと揺れるキャメラでゆったりたっぷりと間を取った演出。寺の鐘のようなゴーンという音をシークエンスのおしりに流す。

 登場人物は外出時はマスク姿。現在の台湾が描かれているということ。

 浮気(風俗通いか?)を繰り返す夫、仕事も怠惰、コンビニで時間を潰している。息子は婚約者がいて結婚式間近。そんな家族の中、主婦はヘンテコな自己啓発セミナーなのか新興宗教なのか「木に抱きついてエネルギーをもらう」会に通う。

 アホほど世界中に転がっている「冷めた夫婦関係」である。夫の元愛人が事故なのか病なのか養護施設に入っていて、夫婦で見舞いに行く不可解。夫は飼い犬を連れて失踪。そんな夫を探偵を雇って探させる妻。

 台湾のアート系映画は、侯孝賢蔡明亮の二代巨頭以降その作風の呪縛からなかなか脱却出来ていない。本作は蔡明亮の系統に思える。正直好きじゃない。

 カタルシスはなく、皮肉っぽいラスト。

 夫と妻が主従関係である家族の形態に縛られる旧来型の価値観は台湾ではまだまだ多数派なのだろう。ただ前作「廻光奏鳴曲」は観てみたいと思った。