https://www.imdb.com/title/tt9198364/?ref_=ext_shr_lnk
果てさて何故に今時「アラビアンナイト」なのか、いや邦題は盛り過ぎで本作は「千夜一夜物語」でも「アラジンと魔法のランプ」でもない。魔法のランプは出て来るが、原作は英国のA.S.バイヤットによる短編とのこと。
何故にアラビアンナイト、と記したが実に見事に移民問題を巡る分断とコロナ禍の世界への考察を導いていて、差別、分断、諍いの源流にある人間の寂しさ、孤独への処方が示される。与える愛こそが、という単純なメッセージではない。
英国の学者アリシア(ティルダ・スウィントン)がイスタンブールで買い求めたガラスの小瓶から飛び出して来た大男、ザ・ジン(イドリス。エルバ)が語る3000年に亘るその人生の物語。ホテルの部屋でひたすら二人の切り返しでの語りなので観ていて少々眠気を誘うが、何百年、何千年という単位で壺に閉じ込められてしまうザ・ジン。その起因は欲すれば失うということ。仏教的な利他の概念に近いが、アリシアもそして観客である私もまたその事に気が付くのである。
愛のかたち、愛のあり方。ロンドンのアリシアの家の隣人老姉妹の極右思想、差別意識を対立から老姉妹の孤独を癒すことで和解する術をザ・ジンから知るアリシア。
孤独を飼い慣らしていたアリシアが気が付く「そばにいる人を愛するということ」。
神話から綿々と繋がる現代人の生きるための真理への考察は普遍性がある。ジョージ・ミラー、「マッド・マックス」の人がこんなにも繊細で暖かいとは。
佳作、お勧め。