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中国語の原題は「青春並不溫柔」、青春は優しくないと言ったところか。
一方英語のタイトルは"Who'll Stop The Rain"でこれはCCRの名曲のタイトル。
これはカレル・ライスの地味ながら佳作の「ドッグ・ソルジャー」('78)の原題。
the rain =雨はベトナム戦争時のナパーム弾の雨を指し、当時のベトナム反戦歌でもある。
そんな事を意識した英語タイトルで、映画の中身は台湾版「いちご白書」('70)だな。
本作の時代が1993年、日本ではとっくに学生運動は絶滅していた時代、戒厳令解除から6年の台湾では反権力の息吹きが芽生えたばかりだったのだろう。
芸術大学の指導教官や、学生達の父親世代の横暴ぶりはまるで大映ドラマの典型的な悪役並みで、ほんまにこんな奴おったんか、と唖然となる。
学生運動につきものなのは三角関係。我が国だと荒井晴彦のオハコだが、本作では一人の女が中性的な魅力で男と女を翻弄する。女をめぐる男と女の三角関係なのだ。
二人を翻弄するチンを演じるイェ・シャオフェイが魅力的。
スー監督が女性だけに、このチンへの肩入れが感じられる。
ただいくつか素敵なショットがあるものの、全体的にはとっ散らかってしまった印象。
というのも学生運動の熱量を三角関係の恋愛の熱量が中途半端に優ってしまった感じがしてならない。権威への抵抗もあっさりと萎んで行く。
しかしそういった未整理も止むに止まれぬ程イェ・シャオフェイの魅力に引っ張られた故なのだろうと想像する。それこそ青春というものだ。