東欧の、ハンガリーかチェコを思わせる架空の国ズブロフカが舞台。明らかにナチスと思われる一党の台頭と占領の時代、1930年代に起きた伯爵夫人殺人事件の嫌疑をかけられたグランド・ブダペスト・ホテルのコンジェルジュ、グスタヴ(レイフ・ファインズ)の逃避行を描く…と話しはヒッチコックばりなのに例によって凝りに凝った構図優先主義と古典趣味と台詞の言い回しの可笑しさでウェス・アンダーソン節全開。何せぞれの時代の主流画角、1930年代はスタンダード、'60年代はシネスコ、'80年代はビスタと画面サイズを変える凝りよう。タッチも戦前映画風、刑務所脱獄は明らかにサイレント映画のタッチだし、殺し屋ウィリアム・デフォーはフランケンシュタインのようだ。アンダーソンの才に惚れ込んだと見たビル・マーレイやハーヴェイ・カイテルといった前作「ムーンライズ・キングダム」('12)組はもとより、エイドリアン・ブロディやらマチュー・アマルリック、エドワード・ノートンといった旬な人達もアンダーソンの駒になりきって登場。ジョージ・クルーニーがワンカット出ていたそうだが分からなかった、不覚。
細部が豊かで映画的教養に溢れ、知的で詩的、佳作、お勧め。
MBS企画で甲南女子大学開学50周年記念短編ムービーの編集作業。