映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「海を飛ぶ夢」監督アレハンドロ・アメナーバル at パルシネマしんこうえん

スペイン、どこかの山深い町。若くして水難事故に合い、四肢が麻痺、26年に亘って寝たきりの生活を送るラモン(ハビエル・バルデム)。彼は尊厳死したいと願い、尊厳死の支持団体から女性弁護士を派遣してもらう。
死後、裁判になった際に周囲を有罪者にしない為だ。が、その弁護士もまた進行性の脳の病を患っており、彼女自身もまた彼を通じて尊厳死を願うようになる…というお話し。
劇中何度も「尊厳のない人生」という言葉が出て来る。今あらためて尊厳、を辞書で引くと「尊く、厳かなこと。気高く、威があること」と書かれていた(岩波国語辞典)。つまり、辞書でさえ平易に説明がつけられない、人間のプライドについての曖昧な規定、ということだろうか。では彼を支えるプライドとは何か、そしてそれが損なわれたことによって死への渇望の理由は何か。それは海難事故に合うまでの20年の人生の想い出と、事故以後の想い出のない人生が物語る。
26年前の海の想い出、恋人のいた日々…ラモンはエンドレスのビデオテープの如く、事故直前までの風景を辿り続ける。ラスト、観客はリアルな死を目撃することになるが、それはまた観る者の人生のビデオテープをも喚起させる。役者がみんな素晴らしい。基は実話だそうな。佳作。

海を飛ぶ夢 [DVD]

海を飛ぶ夢 [DVD]

にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村