「ミリオンダラー・ベイビー」('04)の脚本家ハギスの監督デビュー作。
キネマ旬報'06/2上旬号に載っていた、
今作に出演しているドン・チードルへのインタビューによると、彼は脚本を読んだ時、
自らの差別体験と照らし合わせて「あまりにもリアルで笑ってしまった」そうだ。
舞台はL.A。自動車事故、かっぱらい、警官による尋問…と様々な人種と階層の人々が出会い、衝突する。
その全てが人種と階層差別に根ざした罵り合い、憎み合いである。
こうしてこの映画の前半は「差別のカタログ」の羅列となり、
果て一体この非映画的なカタログをどう閉じる気なのかと思いきや、憎悪し合う人々の二度目の
出会いが展開されるあたりから俄然映画的密度を深め、観る者の心を揺さぶる。
ここからは書けない、その展開の巧さを是非ご覧頂きたい。
瑕疵のない脚本の伏線・構成は完璧な印象、
それが却って図式的になってしまった嫌いはあるが、アメリカ映画が21世紀に至って
初めて人種差別についてのむき出しの本音を語った故か本年度アカデミー賞作品賞受賞となった。
佳作、お勧め。
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