映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬」 at シネカノン神戸。

俳優、トミー・リー・ジョーンズの初監督作品。舞台はメキシコ国境地帯、カウボーイのピート(T.L.ジョーンズ)は、違法移民だが気のいいメキシコ人、メルキアデスと知り合う。やがて馬をやりとりしたり、女をナンパしてモーテルで遊んだりするほどの友達となるが、ある日メルキアデスは死体となって発見されてしまう。何故か事件を隠蔽しようとする町の警察に愛想をつかしたピートは、自力で彼を射殺した国境警備隊の隊員ノートンを見つけ、連れ去る。ノートンを締め上げたあげく、メルキアデスを埋めた仮の墓を掘り返させて、その遺体をメキシコの彼の故郷へと運ぶ旅に立つ…というお話しだが、脚本の時系列は複雑にずらされており、「21グラム」('03)に似ているなと思ったら同じ脚本家だった。しかし、それよりもニヤついてしまったのが、前半「ガルシアの首」('74)で始まり、後半「ケイブルホーグのバラード」('70)へと至るサム・ペキンパー監督へのオマージュであり、なおかつ、色とりどりのアルファベットのチャプター・ボードを挟む'60年代のジャン・リュック・ゴダール監督作品への愛着を示す、T.L.ジョーンズ監督のシネアストぶりである。その大量の映画に出たことと観たことを生かした手腕は、落ち着いたキャメラワークと、さりげない伏線(テレビ番組の使い方の巧いこと!)、そして贖罪の原理を指し示す高潔さに昇華しており、見事だ。'70年代アメリカ映画のフレーバーにゴダールの香水を微かにきかせた、大人の佳作バラード。

久しぶりに元町「丸玉食堂」で汁そばと炒飯。相変わらず美味安価。