映画和日乗

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「ストロベリーショートケイクス」監督・矢崎仁司 at シネカノン神戸

10年に一本しか映画を撮らない矢崎仁司監督最新作。デビュー作「風たちの午後」は1980年か。
原作はコミック、未読だが映画を観終わって猛烈に読みたくなった。舞台は東京、4人の女性の日常を丹念に描く。冒頭、音も無く進む夜の電車の進行方向にキャメラがついて行き、画面上手下に滑るように「ストロベリーショートケイクス」とタイトルが出た瞬間、素晴らしい映像センスがこの後驀進するのだと確信してゾクゾクした。
失恋から始まり、結婚願望。片思い。嫉妬。空疎。嫌い。好き。拒食症。「じゃあね」という台詞。告白。セックス、死。未来。捨てられる。それでも恋。神様。お母さん、故郷。…とひとつひとつの言葉に句読点を打ち続けるようなシークエンスが一見4人バラバラのように展開しつつ、同じ月の下、儚い関係で繋がっている。まるで日本中にいる20代の女の子のありようの全てを描いているかのようなリアル感が痛く、時に辛く、それでいて爽やかで心地よい。石井勲撮影監督の一目で彼のルックと判る画づくり、色使いも美しい。中越典子の「不自由な演技」は玉にキズだが。
ずっと何時間でも観ていたいぐらいだったので、ラストの海辺の観覧車で「まとめ」られてしまった感じが寂しかった。勝手な無いものねだりだが。この映画は暫く憑依しそうで、久しぶりにパンフレット買ってしまったくらい。続編があってもいい。好き嫌い別れるだろうが、お勧め。

ストロベリーショートケイクス [DVD]

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