映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「松ヶ根乱射事件」監督・山下敦弘 at テアトル新宿

松ヶ根という、地方色豊かな町、いや村か。凍った湖の湖面に横たわる女性の死体。第一発見者のガキが死体の胸を触り、股間をまさぐる。呼び出された警官の鈴木光太郎(新井浩文)は、検死に立ち会う。が、死体の瞼が微かに震えて死体は「生き返る」。一方、光太郎の双子の兄・光(山中宗)は、この事件の「犯人」として生き返った女(川越美和)の情夫・西岡(木村祐一)に脅迫される。この情夫、とんでもない「ブツ」を湖面の下に隠していた…という支離滅裂なお話し。
全体にジョエル・コーエン監督「ファーゴ」('96)の影響が感じられる。今村昌平監督「人類学入門」('66)もかな。音楽も似ている。
山下敦弘監督の映画はコントだ、という批評文をどこかで読んだことがある。言い得て妙でこの映画もまたコントの羅列のようでもあり、正直山下作品を見慣れてしまった者として、新味のある可笑しさはない。中盤、鈴木家の持つ空き家に西岡達が住み着き、光太郎が訪ねるシーン、検死をしたはずの光太郎が、西岡の女に気づいているのかいないのかが曖昧で最後までそれが気になってしまった。更に、どいつもこいつも思慮が浅く、想像力が欠如しているのはあまり愛せない。山下監督が「こんなもんだろ美しい国の日本人は」と皮肉っているのなら見上げた根性だが、そうは伝わって来ない。あげく光太郎が「狂って」しまうのも唐突な印象。
川越美和あっぱれ。