映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「MAKOTO」監督・君塚良一 at 国際松竹

監察医のマコト(東山紀之)は死者の霊が見える。死体解剖の最中にも死者の訴えかける
視線を感じてしまう。そんな彼は、妻(和久井映見)を事故で亡くしており、自宅に帰っても妻の姿
が見えてしまう…というお話し。「踊る大捜査線」の脚本家である君塚氏の初監督、
「泣けるホラー」なんていう安っぽい宣伝文句なのでテレビの延長のようなもの撮るのかな、
と思いきや…お見それしました。極めて純度の高い、"映画"そのものだった。
彼はデビューに当たって、「自分に嘘をつかず妥協せずに作った」(キネ旬
3月上旬号インタビューより)とのことだが、その前提としてスタイル=様式の確立を
目指したのであろう。往年の鈴木清順作品を思わせるサウンド・オフや
超自然な雨や風の演出は素晴らしいし、台詞の間合い、カットの省略など
スタイリッシュで緊張感に溢れている。映画的過剰と映画的簡潔が同居しているところが
シネマディクトたる君塚監督の本懐だろう。
その気合いに応えた撮影、照明、美術、録音全て第一級だ。なにせあの
ベッキーがセクシーに見えるんだから凄い(一瞬ですが)。
この映画、興行的には微妙かも知れない、
黄泉がえり」程度の映画で喜んでいる客のレベルに合わせてつくっていないからだ。
傑作、真の映画好きにお勧め。

MAKOTO [DVD]

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  • 出版社/メーカー: バップ
  • 発売日: 2005/09/07
  • メディア: DVD