映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「世界にひとつのプレイブック」監督デイヴィッド・O・ラッセル at TOHOシネマズ西宮OS

本年度オスカー主演女優賞受賞作。
精神的に病んでいる男女の出会いからその克服と再生を描く。
フィラデルフィア中流家庭だが、親父(ロバート・デニーロ)はギャンブルのノミ屋でアメフト狂。家には怪しい輩も出入りしている。母親は特に自己主張のない平凡な主婦、長男は弁護士、俗物の父親と優秀な兄に挟まれてコンプレックスに苛まれて生きて来たであろう主人公パット(ブラッドリー・クーパー)、精神科から退院して出会ったのがティファニー(ジェニファー・ローレンス)。パットは妻の不貞、ティファニーは夫の死がトラウマになっていて他者との適当な距離が掴めず感情がコントロール出来ない。この辺りの繊細な演出ぶりは秀逸。ラッセル監督は自身の息子が心の病を抱えているらしく、恐らくはその経験が生きているのであろう。
ティファニーの誘いでダンスを始めるパット、パットは妻と接見禁止になっているがどうしても手紙を渡して復縁を迫りたい、そのモチベーションの一心でダンスコンテストを目指すが…さて。これ以上はネタバレになるので言わぬが花。
激しく躁鬱が襲わなくても、中年以上ならいくつかのトラウマを抱えているもので、パットにもティファニーにも充分感情移入出来る。ダンスコンテストの入場辺りから泣けて仕方がなかった。喪われた幸せを結婚式のビデオのように再生出来ないのが人生、しかし新たに生き直して幸せを掴むことは努力次第で出来るということ。久しぶりに映画に教えられた思いだ。
エンドロールに故シドニー・ポラックと故アンソニー・ミンゲラ両監督の名が。このベテラン二人が当初は企画していたらしいが二人とも亡くなったことでラッセル監督に原作の映画化権が回って来たとのこと。運命かな。
佳作、お勧め。


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