映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「ウォーリー」監督アンドリュー・スタントン at 109シネマズHAT神戸

小学生の姪っ子同伴なので日本語吹き替え版。
約800年後の地球。ゴミに埋もれてしまい、天候も異常だ。人間は巨大な宇宙船に避難し、地球はウォーリーなるロボットがせっせとゴミ掃除をしている。そこへ、攻撃的なロボット・イヴが宇宙船からやって来て、「命令」を果たすべくあるものの探査を行う。地球にひとつでも植物が生えていれば、それは環境が改善されている証であり、「命令」とはその植物の発見であった。イヴはウォーリーが見つけた植物を宇宙船に持ち帰るが、イヴに恋したウォーリーは付いて行ってしまう…というお話し。
随分絶望的な未来だ。宇宙船の人々は全員肥満し、思考能力が減退している。政府や大資本のプロパガンダには素直に従い、コミュニケーション能力は極端に劣化していてマニュアルがないと何も出来ない。環境破壊とITの先鋭化の成れの果てというこのブラックなメタファーには笑えない真実がある。800年後の世界ではなく、このままだと10年後くらいの世界かも知れない危機感を感じさせる。
その一方「2001年宇宙の旅」('68)や「エイリアン2」('86)への明らかなオマージュを見せてくれる。ウォーリーの動きは明らかに「スターウォーズ」シリーズのR2D2のそれだろう。資料によるとスタントン監督は積極的にそのことを認めているようだ。何せ宇宙船コンピューターの声を原版ではシガーニー・ウィーバーがやっているくらいだ。そういった稚気溢れるSF映画オタクぶりを示しつつ、ディズニー/ピクサー作品らしく子供が絶望しないようにラストは希望が盛り返す。それでもなお「京都議定書」を遵守しないアメリカ共和党政権への痛烈な異議申し立てと見てとったが、考え過ぎか。