開巻、日常感に乏しいある家屋内。もうここから舞台劇調であることが意識的につくられていることを感じる。そこから、北見(豊川悦司)とその妻さくら(薬師丸ひろ子)の相当にオーヴァーな台詞回しでダイアローグが始まる。この奇異な映像空間に「何かある」と訝りつつ警戒していると、「浮気相手」の蘭子(水川あさみ)がシャワーを浴びると言ってバスルームに消え、そこへ「旅に出る」と出て行った筈のさくらが忘れ物を取りに戻って来る、北見とさくらが口論する、この声がバスルームに聴こえない筈はない、しかしそれを示すカットがない、と首を傾げたが瞬間ハタと気がついた。
そうか、そういう仕掛けかと。この仕掛けに気づくのは観る者によって時間差があると思う。という訳であまり内容に踏み込んだことは書けないのだが、「世界の中心で愛を叫ぶ」('04)以来、ナイーヴすぎるほどナイーヴで純真な愛を描き続ける行定監督、ここでも「ある種の観客」のハートを鷲掴みにする演出は健在。とうの昔に「ある種の観客」から離脱してしまった私には、北見の純情に感心するしかない。濱田岳好演。
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