映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「永遠の僕たち」監督ガス・ヴァン・サント at シネリーブル神戸

 オレゴン州ポートランドの町。冒頭、地面に寝そべったイーノック(ヘンリー・ホッパー)が自分の体の周りを白いチョークで囲むようになぞって行く。まるで「死体発見現場」のように。イーノックは自分に無関係な人の葬式に紛れ込む。そこで出会った少女アナベル。彼女もまたそうして葬式に紛れ込んでいた。イーノックは両親を交通事故で亡くし、自らも臨死体験があり、息を吹き返してから旧日本軍の特攻隊員ヒロシ(加瀬亮)が見えるようになった。学校に行かない代わりに彼が友達となって部屋でゲームをしたりしている。一方アナベルは不治の病で余命3ヶ月と宣告される…というお話し。
 静かで小さな世界だがプロデューサーがロン・ハワード、撮影監督はハリス・サヴィデスという大作並みの布陣。サヴィデスのふんわりと柔らかなルックが素晴らしい。死によって世界を分つこと。死は無である、と台詞にも出て来たが臨死体験によってそれを知ってしまったイーノックアナベルの悟ったような無邪気に惹かれる。ヒロシは幽霊というよりイーノックの想念のような存在で精神安定剤の役割なのだろう。限りある命を生きるアナベルを愛することよってイーノックが自己を回復して行く過程でヒロシが嫉妬するかのような淋しい視線を送る、この繊細なセンスはサント監督らしい。
 アナベルの死によってイーノックの想念としてのヒロシは消え去るのであろう、それを暗示する日本語の手紙のカット、ヒロシの独白が切なく、美しい。
 繊細な佳作、お勧め。
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