映画的日乗

映画、食、人。西に東に。

「半世界」監督・阪本順治 at TOHOシネマズ鳳

hansekai.jp  近隣の劇場では早朝8時台と夜中21時台しかやっていないので堺まで観に行く。東京では入っていると聞いたが、堺だけちゃんと昼間に観られるというのは阪本監督の出身地だからか?

 さて、堺よりももっと地方の漁村が舞台の本作。三重県伊勢志摩の記号があちこちに見えるが架空の町という設定であろう、登場人物は全員標準語だ。

 ヒゲの稲垣吾郎の出で立ちに「ディア・ハンター」('78)のデニーロを想起する。元自衛隊員(長谷川博己)の帰郷はショーン・ペン監督「インディアン・ランナー」('91)、中学校の同級生達はリチャード・リンクレイター監督「30年後の同窓会」('18)が脳裏を過る。この三本のアメリカ映画は全てベトナム戦争で受けた心の傷がテーマとしてあった作品だ。先の大戦以来で初めて海外派兵された自衛隊員の心の有り様が描かれる。しかしそれは三人の40歳目前の「普通の男たち」の一人として。

 どこかの異国の戦場が「世界」だった男と、地方都市の山と炭焼き小屋と家の三角形を行き来する男の「世界」はそれぞれが半分であり、相対化しきれない。そのことを船と陸の距離で言い争う二人。また、この町で中古車販売業を父子で営む男(渋川清彦)は

 三人を三角形の関係と言い張る。町に仕方なくとどまるこの男にとって、点である不安は線の結びつきで解消されている。物語はやがて重大な出来事によって半分ずつの世界が相対化し、三角形はかたちを変える。彼らの子の世代はまた別の半世界にいて、それが新しい世界に向けて力強く動き出すラスト、心動いた。傑作、お勧め。