映画和日乗

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「ウエスト・サイド・ストーリー」監督スティーヴン・スピルバーグ at OSシネマズミント神戸

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 思えばスピルバーグという人はデビュー作以来過去の名作のアップデートまたはコンバートの天才であった。

 「激突!」('71)「JAWS」('75)はヒッチコック、「未知との遭遇」('77)は旧約聖書、「プライベート・ライアン」('98)は「史上最大の作戦」('62)だ。

 ハリウッドはマネーメイキング監督としての才能は認めていたが、個としての作家性は薄いと見做していた。そんな彼が個を曝け出し、ヒッチでもディズニーでもなく実際の記録フィルムに由来する撮影技法で臨んだ「シンドラーのリスト」('93)でようやくオスカーのお眼鏡に叶うこととなる。

 が、近年アップテートでもコンバートでもなくむしろあからさまに過去の名作を引用していたのが「ペンタゴン・ペーバーズ」(2017)と「レディプレイヤー1」(2018)。

 前者は「大統領の陰謀」('76)であり後者は「シャイニング」('80)だ。デジタルを嫌い、フィルム撮影にこだわり、ネットフリックス作品のオスカーノミネートに 異議をとなえる20世紀映画原理主義スピルバーグ

 そんな彼があからさまどころか原理主義宣言とも言うべき今回のリメイクである。

 エンドロールに燦然と輝くコダック35mmフィルムのクレジット。クラシックに徹している演出。人種差別による社会の分断はアメリカにおいて今に始まったことではない。トランプ以後の分断社会への異議申し立てのような批評も見受けられるが、殊スピルバーグに限って言えば、そんな政治性よりは未来への映画への微かな絶望すら感じられるクラシック懐古の色彩が強い。

 やはり、と言うべきか次回作は自伝的作品とアナウンスされている↓

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 過去へ過去へと遡るスピルバーグイーストウッド「クライ・マチョ」の亡霊のようなカウボーイもまた頑迷なまでのクラシックアメリカへの懐古だった。二人とも'70年代から今日まで生き残っている数少ない監督である。

 ともあれオリジナルを知らなくても楽しめるし、ダンスは素晴らしいしそれをできるだけカットを割らず延々と観せてくれるクレーンショットも美しい。 

 佳作、お勧め。