映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「横道世之介」監督・沖田修一 at 神戸国際松竹

吉田修一の同名小説の映画化。原作は未読。
後半、新生児の出生年月日に「1988年」と書かれていたから、1987年前後の東京が舞台。冒頭から勿論CGだがあの頃の新宿を映し出す。当然ながらデジタルではなくフィルムの質感だ。長崎の港町のシークエンスのやや灼けたようなルックも確信犯だろう。美術スタッフの苦労は大変なものだっただろう、エンドロールの美術と持道具のスタッフの数が尋常ではない。横道世之介を演じる高良健吾は'87年熊本県生まれ、そして沖田監督は'77年埼玉県生まれ。だから観ている私の方がリアルタイムの東京を見知っている訳だが全く違和感がない。
どうという話しではない。シークエンスごとに若者達の出会いとエピソードが描かれ、所謂オチは無い。が突如時空が飛び、現代のその後の彼等の姿が挟まれるという構成。
素直に、恥も外聞も批判も無く言えば良い時代だった。ここに描かれている大学生より今の学生の方が窮屈な時代を生きていると断言出来る。大学中退したばかりなのに「景気良いんだ」とすぐ不動産屋に就職できる時代。
160分の長尺だが全く飽きない、フィックスを多用し、ここぞという時だけ動くキャメラ(撮影:近藤龍人/照明:藤井勇)、高良健吾凄い、吉高由里子はこれがベスト、あの車中のうっすら涙にこちらも涙だった。
エンドロールに「協力 斉藤由貴」だって、新宿駅東口のAXIAのあの看板。
映画丸ごと抱きしめたくなる傑作、お勧め。


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