クリストファー・プラマー、何と86歳(撮影時)で主演、もう一人の重要な出演者マーティン・ランドーが87歳。
この二人のアウシュヴィッツへの記憶が、例え認知症になろうとも消えない宿痾がミステリー調の脚本から浮かび上がる。ちょっと「ゆきゆきて神軍」('87)を想起した。
ラストがどんでん返し(途中で想像がつく向きもあるかと思うが)なので詳細は記せないが、観客を騙すための仕掛け、例えばナチスがユダヤ人と同じく隔離、根絶対象にしていた同性愛者に謝罪するゼブ(クリストファー・プラマー)のシーン。結末から逆算するとこのシーンを当初観た時と、結末を知ってから反芻する時とでは全く逆の意味を持つという巧妙さが随所に散りばめられている。
銃の使い方を教えてくれ、忘れるからと銃器店の店員に請いながら、実際に銃を撃つ段になると手慣れた扱いでひとや犬を仕留めるのもあとから思えば伏線でもある。
個人的には先月アウシュビッツを訪れたことがこの映画をより一層感覚的に深く寄り添える結果となった。その時に見た処刑された同性愛者、障害者の夥しい数の写真が脳裏でオーバーラップした。
2017年3月29日、アウシュヴィッツ