映画和日乗

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「殺人の追憶」監督ポン・ジュノ at シネカノン神戸

1986年、韓国ソウル郊外の農村で起きた連続婦女暴行殺人事件を追う3人の刑事。
実際にあった事件で、プレスシートにはっきりと「現在も未解決」と書いてあるので、映画の最後に至るまで犯人が捕まらない。
軍政下の韓国、デモ鎮圧の為に警察の捜査が手薄になっている隙をついての犯行、被害者の遺留品以外一切の物証がなく、捜査は難航するのだが、この3人の刑事、
およそ賢くないのだ。2人の地元刑事はひどい粗暴に描かれており、ソウルから派遣される「大卒」刑事も段々と冷静さを欠いて行く。
では観ていてつまらないかというとその反対だ。
何故なら、殺人の過程と、殺された後の死体が極めてリアルだから。いろいろ映画を観て来たが、これだけリアルな死体を観たのは初めてだ。この死体が映画に深みを与えている。
「トンネル」「側溝」といった「空洞」を捉えた映像が語る「光と闇」、無能で泥臭い刑事の顔と、無表情な「最有力容疑者」の顔の対比の使い方など、演出は冴えている。音楽(岩代太郎)も素敵。

殺人の追憶 [Blu-ray]

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  • 発売日: 2014/06/27
  • メディア: Blu-ray