第6回宝塚映画祭のプログラムの一環として上映。1959年東宝、宝塚映画。原作・井伏鱒二、
脚本は藤本義一(監督と共作)。舞台は大阪、難波の天牛書店から始まり、チンピラの
藤木悠が得体の知れない方言を話す学生の小沢昭一を自分の下宿に案内する。
そのアパートは夕陽ケ丘の高台にあり、遠く通天閣が望める。このアパート、
ロケセットだと思うのだが、崩れ落ちそうな大屋敷、よくこんなのがあったものだ。
で、このアパートの主がフランキー堺、4カ国語を操り、よろず代筆代書を引き受け、
怪しげな録音やら天体研究やら一体何屋かわからない。ロールキャベツと蒟蒻をつくる江戸っ子
の桂小金治、3人のダンナを抱える乙羽信子、いつも下着姿の清川虹子、保険屋増田喜頓、
身重の新婚市原悦子、医者で媚薬を開発する山茶花究、ドケチの賄いばあさん浪花千栄子、
そしてそこへ何を好き好んでか入居する美人陶芸家、淡島千景。
キャスティングが最高に楽しい、藤本義一らしいドライで猥雑なエネルギーに満ちた人間模様
は「人情喜劇」の正反対。が、主人公・フランキーのキャラクターは後半風邪ひいて
ずっと咳をしているところからして「幕末太陽傳」('57)の居残り佐平次の延長線上、
というかそのままに近い。終盤九州に舞台が移ってからドタバタ度が強まり、失速した感がある。
小沢昭一、1959年だと30歳。これで学生帽被って「つかあさい」と「がんす」が
いっしょくたになった方言を話し、大金もって贅沢三昧、替え玉受験にフランキーを雇う受験生、
という奇天烈な怪役、怪演。同じ川島監督の傑作「しとやかな獣」('62)の「金髪外人」も
悶絶級だったが、やはり不世出の名役者。
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