映画和日乗

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「マッチポイント」監督ウディ・アレン at シネリーブル神戸

ウディ・アレン監督がNYを離れてつくった最新作。前作「メリンダとメリンダ」('05)前々作「僕のニューヨークライフ」('06)はパスしていた。「さよなら、さよならハリウッド」('05) の凡庸さにがっかりしたからだ。心機一転、舞台はロンドン。アイルランドの貧しい出のテニス・プレイヤー(ジョナサン・リース・マイヤーズ)が、ロンドンの高級テニスクラブのコーチとなり、そこで知り合った上流階級の一家にまんまと食い込む。一家の娘と婚約するが、はすっぱなアメリカ人の女優の卵(スカーレット・ジョハンソン)と恋に落ちたことで破滅への道を辿る…というお話し。要するに神代辰己「青春の蹉跌」('74、原作・石川達三)であり、「陽のあたる場所」('52、原作・ドライサー「アメリカの悲劇」)である。つまり、話としては古典。この古典に「運が良ければ…こうなっちゃうかも」というアレン流のスパイスが効いている。前半の、卓球ルームでのジョハンソンの登場と出会いは、心理学者アレンの手腕がいかんなく発揮されているが、中盤からは話がばれているだけに省略が不十分でダレる。ドストエフスキー罪と罰」まで持ち出しているのに、主人公の行動心理はどうにも幼稚で不誠実な印象のままで終わる。「分っていても面白い」のが古典なのだが、その分落とし穴もあるのは自明の理の筈。間抜けな刑事達程度の「付け足し」では面白くはならない。そして彼の作品で2時間を超えるのは初めてではないだろうか。惜しい。

マッチポイント [Blu-ray]

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