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「不都合な真実」監督デイヴィス・グッケンハイム at 阪急会館

昨日の第79回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞。音楽が印象的だと思ったが、オリジナル歌曲賞も受賞となった。
プロデューサーにローレンス・ベンダーの名前がある。インディペンデントから娯楽大作まで手がけるハリウッドの売れっ子プロデューサーがこの環境保護ドキュメンタリーを手がけたということに、お気楽なフィクションの映画でアメリカ国民をただ楽しませているだけで良いのか、国家国民の意識変革を促さないことには、アメリカはそして地球は滅びるという強い危機意識を感じる。
この20年、ハリウッドに於ける、徹底したマーケティングによるビジネスとしての映画づくりの閉塞感は、アメリカの重厚長大産業の落日、更には対テロ戦争による国家国民全体の疲弊感と合わせ鏡にあり、それら全ての巨大な「アメリカの問題」を解決するための緊急課題は「意識変革」であるということなのであろう。
メイン・パーソナリティのアル・ゴアという人に於いても、「こんなに真っ当に訴えているのに」何故自分が大統領選挙に落選したのか、国民に対する失望感を微かにのぞかせる。これほど精力的に講演していて「何か変化はないかと見回すが…(アメリカの政治と国民に)変化がない」、とロサンゼルスの空港で愚痴るシーンが切ない。今作を観ると、日本の方がよほどエコ対策が進んでいることが伺える。国土が狭い分目に見えて敏感であり、そうでない国ほど自然の荒廃に鈍感なのかも知れない。
ラスト、それでも地球温暖化に対する意識変革を訴えるアル・ゴア氏の叫びと、エンドタイトルに流れる文字が胸に迫る。必見。

不都合な真実

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