シドニー・ルメット84歳、44本目の新作。
ブロードウェイの戯曲作家出身のケリー・マスターソンの映画脚本デビュー作でもある。
この、「狼たちの午後」('75)やら「カッコーの巣の上で」('75)やら「現金に体を張れ」('56)やらへのオマージュが感じられる映画愛に満ちた若々しい脚本をルメットがチョイスしたのか、プロデューサーがルメットを指名したのかは定かではないが、プロ中のプロの職人技で仕上げられている誠に久しぶりのウェルメイドとなっている。
が、どうだろう、この決して賢くない兄弟の犯罪(止めときゃええのに、と思う)、複雑な性格のその父親、兄の妻で弟ともデキている妻(あの喪服のセンス!)、神経質な弟の元妻。観ている者はこの中の誰にも感情移入出来ないのだ。ルメット御大のモラリストをしてそうさせているのか。掟破りな仮令を言えば、これがコーエン兄弟なら、ある種の可笑しみと哀れみを添加してくれるのではないかと妄想してしまう。全ての展開ポイントが拳銃を撃つことで転がって行くのも「またかい」という気になってしまった。
とまれ、'70年代アメリカ映画のフレーバー、じっくりと芝居中心に見せるルメット節は堪能。
同い年マリッサ・トメイ天晴!
- 作者: シドニールメット,Sidney Lumet,中俣真知子
- 出版社/メーカー: キネマ旬報社
- 発売日: 1998/08
- メディア: 単行本
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