フィックスのフレームの中をぐるぐると円を描くように走る黒いフェラーリ。何度も何度も回り続け、いい加減しつこいぞと思う頃、フレームの真ん中にピタリと止まるその車。そうか、この調子で今回も「退屈な人生」を描く気だなとソフィア監督の「意外に強靭にして揺ぎない作家性」に向かい合わされる。
「ロスト・イン・トランスレーション」('03)とモチーフは似ている。もっと言えば「ロスト…」の中にも出て来たフェリーニの「甘い生活」('60)からのインスパイアはまだここでも自己踏襲されている。
東京という舞台がL.A.とミラノに置き換わり、「薹を過ぎた俳優と女の子」が今回は「売れっ子俳優と娘」に置き換わった。そしてまたも主舞台はホテルだ。ソフィアの中にある、父フランシス・コッポラとの関係、あるいはこれまで見知ったフランシスの周囲にある映画界というものが幼児体験として刷り込まれているのが良く解る。恐らくフランシスによって世界中を連れ回され、父の仕事中はホテルで時間を潰さなければならなかったのだろう。ここにあることが彼女ソフィアにとって日常だったことは想像に難くない。
ラストは甘い。自分のセンスで埋め尽くす強靭さは天晴だが、このままだと先細りするのではと老婆心ながら。
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