映画和日乗

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「ダンシング・チャップリン」監督・周防正行 at 銀座テアトルシネマ

周防監督3年ぶりの新作は結婚15年目を迎える草刈民代との再コンビ作でチャールズ・チャップリン作品のバレエ舞台化。前半がメイキングドキュメンタリー、後半が創作バレエ本編という異例の構成作品となった。
思えば前作「それでもボクはやってない」('07)でこれまでの周防作品に根深く反映している映画的教養を封印、ひたすらに「痴漢冤罪を生む司法制度の問題点」を詳らかにする反映画的とも言える手法へと舵を切った。それは「たまたま」ではなく、今作に至って明確に新しい方法論として進化させているように思う。そもそもDVDなどで本編の後に特典として鑑賞されるメイキングを完成度の高い一編の作品として本編の前に見せてしまうという構成が既に反メイキングと言うか既成の枠組みへの挑戦である。更に後半の本編はチャップリン諸作品のバレエ化とその映画化という「映画を一旦舞台化し更にそれを映画に戻す」という仮令思いついても実行に移すには相当の勇気の要る手法。反映画もまた映画であって、ここに見た事のない映画が産まれた。テレビ的非映画へ向かって放たれた叡智の粋、そして夫婦愛。


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