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「人生の特等席」監督ロバート・ロレンツ at 渋谷HUMAXシネマ

原題は"Troubled With The Curve"、カーブ(変化球)に難あり。本編を観るとカーブが打てない長距離バッターのことだと分る。邦題の人生の特等席とは何ぞや、と思ったらこれも劇中に出て来る台詞だった。
俳優引退かと思われた御大イーストウッドちゃっかり復帰、勿論何ら批判の対象ではない。勝手な想像だが何か自作の予定がキャンセルになって時間が空いたのかも知れない。というのも今作、監督を除いては全てイーストウッド組のスタッフ。その監督も長年のイーストウッドの助監督とのこと。脚本もこういうと何だがイーストウッド本人が監督するには「軽い」。いっちょやったるか、な企画に見えなくはない。
お話しは「マネーボール」('11)の正反対、いやアンチテーゼ。経験とカンで選手の才能を見極める老スカウト、その"人生のカーブ"を嘗て彼が「捨てた」娘が支える、というお話し。イーストウッド好みの旧き佳きアメリカの色合いが濃い。ロケーションも野球場、ビリヤードバー、田舎のモーテル。ロレンツ監督はそんな御大に引っ張られてはなるものぞと懸命だが結果は実にオーソドックスな演出。しかしそれが良い、それで良い。かつて「ダーティハリー3」('76)のメイキング映像を見た事があるが、監督が完全にイーストウッドに牛耳られ呆然と佇んでいる様子が映っていた。
とまれ、ラストの上手く納まり具合は納まり過ぎの感もあるが、「それがアメリカ映画だ」とまた御大のニヒルな微笑が脳裏にオーバーラップした。


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