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「リアル〜完全なる首長竜の日」監督・黒沢清 at 東宝関西支社試写室

待望久しい黒沢清監督最新作。
出資者や自称プロデューサーの御用オペレーターのような「ディレクター」による映画ならざる映画群がメジャー配給の権利を勝ち取っている現在、きちんと自らの刻印を押せる彼のような真っ当な映画監督の作品は悉く企画段階で潰れている。そんな中ようやく結実した今作品は乾緑郎の同名小説の映画化。原作は未読。
自殺未遂で昏睡状態に陥った淳美(綾瀬はるか)。その幼なじみで同居人の浩市(佐藤健)は国立先端医療センターなる研究所で彼女の脳内意識に潜入する実験を受け入れる。センシングと呼ばれるそのプロセスを経て浩市は淳美の意識世界で彼女と再会する。ワーカホリック気味の漫画家である淳美に浩市はなす術もなかったが「首長竜の絵」というそれまで聞いたこともないキーワードを彼女の口から聞く。浩市は現実世界に戻って首長竜とは何かを探すが「副作用」で現実世界と仮想世界が混濁して行く…というお話し。
キビキビとシャープなデジタル映像が緊張感を煽り、ちょっと慣れてしまった感もあるが黒沢監督独特のショック演出も冴え渡る。現実世界に戻った筈の浩市が車を運転すると何とスクリーンプロセス。そこいらあたりから既に現実なのか非現実なのか曖昧になって行く絶妙のタイミングの演出に唸る。「生きている人が死んでいて、死んでいる人が生きている」という「ツィゴイネルワイゼン」('80)を思い出す。見ている側の意識も宙づりのような状態にさせられるのだ。
同じモチーフの「インセプション」('10)と比較する向きもあるようだが(プレスシートに書いてあった)こちらの方が楽しい。
さてその首長竜が登場する辺りから物語は変貌し、主人公達は別の世界の扉を開けるような展開となる。公開前なのでここまでにしておくが、唖然とするか粟立つ程に興奮させられるか。試写室でも騒然となっていた。
6月1日公開。

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