映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「まく子」監督・鶴岡慧子 at シネリーブル神戸

makuko-movie.jp  西加奈子の原作は未読。一方監督の鶴岡氏は30代、登場する母親世代と子供達の世代の中間ということになる。冒頭の小学校、主人公の男の子サトシ(山崎光)の頭の上から枯葉が降って来て、運動場に行くと大声で漫画を朗読する男、取り囲む子供達のショット、或いは突然の雨から回想に入ってサトシの父親(草彅剛)の浮気現場へと繋がる‥‥などでなかなかええ映画的センス、と居ずまいをただしつつこれが中盤以降失速気味になる。人物二人の会話を、同じような背景の前で悉くワンカットで処理して行くのはちょっとな、と思いつつ、貧しい日本映画の現場の事情を知る者としての想像に過ぎないが、スケジュールの都合でカットが割れなかったか、とも思う。しかし小学校5年生達の会話は確信犯的に子供らしくなく、原作通りなのか否かはいざ知らず、文学的だ。しかしそれはこの監督の的確な演出で映画ならではの世界の構築に貢献している。

 その中盤を過ぎると奇想天外な展開、突如スピルバーグ調となり、唖然。この勇気は買いたい。

 草彅剛、これまで見せたことのない様々な動作はかのジムショからの解放のメタファーとなっている。それとて貧しい日本映画の事情、でもあるが。