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韓国人移民一家による西部開拓史。もっとも本作の舞台はアーカンソー州とのことで、南部だが。
テレビのデザインとそこに映っている韓国の映像から時代を推察するしかないが、1980年代だと思われる。携帯電話は出て来ない。
観賞後に腑に落ちてくる感覚がこれまでに無い新しいものだった。
掛け値なしの感動はない。かと言って物足りなさもない。良いものに出会った事は間違いない。
一家の子供の面倒を見るために韓国からやって来た母方の祖母が川の清流に沿うように植えた芹(ミナリ)が、映画の終わりには生えている。
水と光の自然のもとに時の移ろいと人の営みがある。
ここで安易に小津、という記号を使いたくない思ったがキネマ旬報4月上旬号のチョン監督のインタビューではっきりと小津の影響を語っている。私はそれよりジョン・フォード監督の「タバコ・ロード」('41製作'88日本公開)を思い出した。
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なぜかその原作まで読んでいて、西部開拓時代の貧しい一家の奮闘と、最後に家が燃えるところを覚えている。本作「ミナリ」も納屋が燃えるのだ。
「タバコ・ロード」の監督ジョン・フォードがつくった夥しい数の西部劇には、神の名のもと厳しい自然を克服するバイタリティ、家族愛と人道、正義と夢があった。
トランプ時代、そして新型コロナによる禍の時代、信じるに足る正義と夢を見失ってしまった現代アメリカに、目と心に沁みる自然と人との和合にこそ神は宿るという一つのメッセージがアジア系移民のクリエイターによってもたらされた、そう思う。