映画的日乗

映画、食、人。西に東に。

「もみの家」監督・坂本欣弘 at テアトル梅田

mominoie.jp 2ヶ月ぶりの映画館、田中美里から是非観てと言われていたこの作品を選んだ。

 富山県に実在するフリースクールをモデルとしている「もみの家」なる施設の一年を描く。不登校の高校生彩花(南沙良)は登場した時から髪で顔を隠すようにして俯き、ボソボソと話す。両親によってこの家に預けられ、最初に出迎えたのが佐藤(緒形直人)、そしてその妻の恵(田中美里)。妙に元気溌剌な生徒達を「距離感がヘン」と受け付けない彩花だったが、優しい恵とあるお婆さん(佐々木すみ江)との出会いで徐々に心を開いて行く。

 佐々木すみ江はこれが遺作。彩花とのやりとりで多分後半で死ぬなと予測がつく。心を閉ざした少女が田舎で自然と触れ合い、地元の祭りに参加して、仲良くしていたお婆さんが死んで、生きる意味を見つける、と「皆殺し映画通信」の案件要素を満たしているが、田植えから稲刈り、秋から真冬と季節を跨ぐロケが功を奏している一瞬がある。お婆さんの葬式の最中、親族の言葉に嫌気が差した彩花が会場の外に出ると猛吹雪というショット。ここまでずっと穏やかな自然描写から一転、ヒロインの心情を搔き立てる絶妙の空間造形だった。さてここから恵のお産を丁寧に描くことで彩花の在り様がぐんぐん変化して行く。

 春が来て、学校に行くことにした彩花、一年前の自分に似た女の子が「もみの家」にやって来る様子を見ている。役者の顔の表情を丁寧に捉えた効果がこのラストに顕れている。