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「ゴジラ-1.0」監督・山崎貴 at OSシネマズミント神戸

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 監督山崎貴は脚本も兼任、という事はストーリーも編み出したということになる。

元祖「ゴジラ」は1954年公開、水爆実験によって覚醒させられたという戦後の文明批判が込められていたが、本作は戦争末期の1945年に端を発する。その時点でゴジラが現れていた、事がこのタイトル「-1.0」の意味であろう。そして大戸島という記号によって、本作が「先祖がえり」を目論んでいることは自明である。

 怪獣に惑わされる市井の人々の生活を描かない、というゴジラシリーズの不文律を破って、山崎監督は丁寧に敗戦直後の日本人の生活ぶりを描写する。観客が早くゴジラが東京を襲うシーンを観たがるのを焦らしに焦らす。これは「JAWS」('75)でスピルバーグが取った映画的作戦「観客が見たいものを徹底して見せずに焦らす」と同意義なのだろう、と思って見ていたらなんと人物構成からエピソードまで「JAWS」のまんまではないか!と持った湯呑みをバッタと落とし、小膝叩いてニッコリ笑う。

 

 

JAWS」のロバート・ショーも戦争帰り、しかも日本軍に撃沈された船に乗っていた。それが佐々木蔵之介にダブり、リチャード・ドレイファス海洋学者が吉岡秀隆にダブる。さすれば神木隆之介ロイ・シャイダーの演じた署長か。そういえば彼も家族を置いて鮫退治に出かけたな。

いや、この「JAWS」作戦は賞賛に値する。そして元祖「ゴジラ」の水爆実験という戦争への無反省批判も本作にきちんと通底している。

敗戦の理由を検証せずに、人命軽視による惨禍の責任を取らない日本という国に、ゴジラはある種怒りの権化として「いま一度」東京を破壊するのだ。

伊福部昭のテーマ曲をどのタイミングで流すか、それを委ねられた映画監督は世界一幸福である。

佳作、お勧め。

 

Godzilla-1.0 Godzilla Suite II

Godzilla-1.0 Godzilla Suite II

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