邦題はえらく直截的だが、原題は"Plan A"。
AということはBがあったのか、と検索すると驚くべきことにPlan Bは有った。
そして映画ではAは実行されなかったが、史実ではBは実行されている。失敗したのだが。有料記事だが、ここに詳細に記されている。
また、本作に出て来る民間組織ナカムについてもよく分かる。ハガナーという言葉が映画の中では説明されていなかったのだが、この記事によるとイスラエル建国前の国軍のことらしい。
newspicks.com そうすると、妻子を惨殺され、なりふり構わず戦後の一般ドイツ人を水道に毒を流すという方法で復讐するという"テロ"を実行しようとして果たせなかったマックス(アウグスト・ディール)が、唐突に復讐の連鎖を止める決意をした、というのはフィクションの可能性がある。つまり、帰郷せずにPlan Bに加担したのかも知れないし、あるいはマックスという人物が映画の為に創作されたキャラクターなのかも知れない。
ナカム、の前に容赦無く強制収容所のナチス側関係者を処刑する英国軍ユダヤ人部隊というのが登場する。これも史実らしい。↓この記事参照
本編でもしつこく描かれていたが、ナチス・ドイツが降伏したからといってユダヤ人差別がすぐに無くなった訳ではない。
マックスが水道復興工事の職を得ようと、面接を受けるシーン。
面接官に一旦は撥ねられるもののマックスはこう食い下がる。「民族浄化の為に五年間国家に尽くした」。するとなんと採用されるのだ。民族浄化とは勿論ユダヤ人排斥のこと。ユダヤ人の身分を隠してナチス信奉者のフリをしたら採用される皮肉は強烈だ。
怒涛の怒りをぶつけるユダヤ人の一方、水道の復興工事で働くドイツ人達がそれなりに人情家であるというのが、彼らの復讐が被害者にとってはテロである事を印象付ける。
戦後のドイツの街並みを再現したロケセット(ウクライナロケらしい)、見窄らしい身なりの人々のメイクなど細部は見事だ。
冒頭とエンドロールのモノローグ、そして最後のテロップ文言はイスラエル人監督ならではだが、そこを抑えて復讐の連鎖を止めよう、とあればなと無いものねだり。