映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「四川のうた」監督ジャ・ジャンクー at テアトル梅田

オフィス北野プロデュース。
現代の四川省成都市。震災前なのか、そのことには全く触れられていないし、風景もまたそれを物語っている。
「420工場」という巨大な鉄鋼工場が、移転の為取り壊されるらしい。かつてここで働いていた労働者達へのインタビューが始まる。が、市井のおじさんや看護士さんであるはずの人々が、しっかりとキャメラを見つめて佇むところから話し始める。観る者はここで直ちにこの映画が登場人物の恣意的な動きや言動で展開しないことを覚悟させられる。そして滔々と語られる人々の身のうち、来し方。先輩への敬意や、ほろ苦い失恋、流行っていた山口百恵のドラマ…と一体いつまでこの平凡な市民史につき合わされるのかと思いきや、ジョアン・チェンが登場することで、いま観ているこの映画をドキュメンタリーとカテゴライズさせない、では一体何なのかと、意識が宙づりにされてしまうのだ。デジタルビデオによる完全にコントロールされた構図、シュールとリアルの中間。新しい映画をつくるということは勇気を振りしぼる事なのだと教えてくれるジャ・ジャンクーの才能に圧倒される。中国の地方都市の近代化、再開発の息吹は、ガラガラと音を立てる工事の音よりもこうした市井の人々の息づかいや涙から生き生きと伝わって来る。佳作、お勧め。

「梅田サウナニュージャパン」へ。