映画的日乗

映画、食、人。西に東に。

「ヒアアフター」監督クリント・イーストウッド at 109シネマズHAT神戸

 南海のリゾート地がオープニング。フランス語を話すマリー(セシル・ドゥ・フランス)は突然の大津波に巻き込まれ、九死に一生を得る。まさしく死にかけたマリーは、白く輝く世界の向こうに何か人がいるかのような世界を垣間見る。続いてサンフランシスコ。ジョージ(マット・デイモン)は、霊視能力がありながら、それを封印し港湾で働く。しかし兄ビリーはそんな彼に霊視を望む人を会わせたりする。霊視をビジネスにしたいのだ。そしてロンドン。アルコールと薬物に溺れる母親を持つ双子の兄弟。12分早く生まれた兄ジェイソンが交通事故で死ぬ。里子に出された弟マーカス(ジョージ・マクラレン)は、死んだ兄に再会することを願い、霊能者を探し求めて家出する。この三都三者が時を経て、ロンドンのブックフェアで一同に会することになる…というお話し。
 イーストウッドは死後の世界を意識させながら決してあちら側を描かない。そして死に至る者をその死後どこかに登場させることもしない。映画を観る側に対して徹底したリアリズムを約束している。この手の話しで幽霊やら死後の世界やらを見せる作品は数多くあり、それらは全てファンタジーあるいはホラーとして「処理」されている。が、ここではそのような逃げもなければ、何らかの確証などありえないとばかりに提示されず、ジャンル入りを拒んでいる体だ。異様にリアルな交通事故直後の少年の描写も含めて死を弄ばない姿勢を貫いている。 
前作「インビクタス/負けざる者たち」('09)と似た硬質でグリーンがかったクラシックなルック。イーストウッド監督自身が「この映画の前に津波や地下鉄の爆破を描いたことはなかった」と語る新たな挑戦と、それ以外の淡々とクラシックでベーシックなカット割りに徹したショットの連なりの奇跡的融合は、見終わって深く静かな印象を残す。
 三者のロンドンでの集結は単なる作劇上の都合などではなく、何らかの手に依る導きであり、間一髪でテロに遭遇しなかったマーカス少年とジョージとの静かな対話は、その根拠を示しつつやがて兄の霊ではなく生きる者ジョージのマーカスへの箴言にすぱっと転化して行く。この瞬間の崇高さは感動を禁じ得ない。相変わらずこういう映画のキモをさらっと見せる御大の演出の匙加減はひれ伏してしまうほど見事だ。
佳作、お勧め、ハンカチは忘れずに。
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