映画的日乗

映画、食、人。西に東に。

「永い言い訳」監督・西川美和 at TOHOシネマズ六本木

関係の冷めた夫婦であることを指し示す冒頭の散髪シーンから、極めて純度の高い映画的空間に、これまで誰も挑んではいなかったと思えるほど衝撃的な、安易に協調しない人々の会話が展開する。
妻を喪った者同士の補完的友情も、一人の女性が参入することで大の大人が寂寥感を抑えきれずひっくり返してしまう瞬間のヒリつき。
「あんたに俺の(私の)何がわかる」という、映画や芝居やドラマで何万回と聞き古された言葉が、ここでは胸を抉るほどの真実味を伴う。
人の二面性、悪か善か、理性、倫理とその反対。その二分法もここでは「それだけではない」と露わにされて行く。妻の葬式で泣けない男(本木雅弘)も、働きづめのトラックの運転手である父(竹原ピストルの見事なこと)とその息子の諍いも、そこに至る人の心の弱さと、理性的になれないどうしようもなさを丁寧に描くことで見事に見せつける。
私はこんなだけど、見ているあなたはどうですか?そう問い続けられているような124分。マザコンでございます、と開き直る師匠の作品に突きつけた、弟子・西川監督の返歌と捉えるのは穿ち過ぎか。 
傑作、必見。


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