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「それでもボクはやってない」監督・周防正行 at 東宝関西支社試写室

いわゆるHOW TOものの流行りの発端は伊丹十三監督の「お葬式」('84)だったのではないか。その後、伊丹監督はそれを路線化してヒットを連打した訳だが、そのうちの一本でもある「マルサの女」('87)のメイキング・ビデオをかつてつくった周防正行監督の11年ぶり最新作。今作に於けるHOW TOは「裁判制度」。
ストーリーは単純で、痴漢のえん罪を訴える26歳フリーター青年(加瀬亮)の日々と裁判を描く内容。
伊丹十三という人が常に「取る、捕まえる」側つまり国家権力サイドに立っていたのに対し、周防監督は警察権力のずさん、無気力、人権無視、そして横暴の限りを克明に描き、返す刀で司法制度、裁判官の組織の不純を暴く。東宝マークの作品でここまでむき出しかつ真摯に反権力を描けたのは周防監督ならではだと思う。何せ「私たちは国家権力と闘っているのです」という台詞があるくらいだ。真っ当な正義など、この国にはとっくにないのだとはっきりと主張している。「主人公は無実なのに有罪にされてしまうかもしれない」というスリルで2時間23分、緊張と憤りで観客を飽きさせる事はない。「Shall We ダンス?」('95)の延長線=笑って泣けてハッピー、という制作サイドからもされたであろう"期待"を良い意味ですっぱり裏切ってくれた周防監督、天晴!!2007年1月20日公開。

それでもボクはやってない スタンダード・エディション [DVD]

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