言わずと知れた1963年工藤栄一監督の名作中の名作のリメイク。大きな変更点は、鬼頭半兵衛('63版では内田良平、今作は市村正親)の知略ぶりがバッサリカットされていること、と小弥太('63版では山城新伍、今作は伊勢谷友介)のキャラクター。
まず半兵衛の知略ぶりについては'63版では「敵ながら天晴れ」ぶりの仕掛け(殿の乗った籠を二つ用意し撹乱する)がサスペンスフルだったのだが、製作陣はこれをカットしてラストの大立ち回りに「集約」させる戦略とっている。
次に小弥太。これは脚本の天願大介の指向が大きくはたらいていると想像される。侍同士の戦いを、所詮身分制度の時代の醜い権力闘争に過ぎないという視点はこの小弥太からのものだ。
また凶暴な殿様('63版では菅貫太郎、今作は稲垣吾郎)も、独善的な理論をぶつサイコパスとなっておりイマ風である。
この映画は何をさておいても松方弘樹演じる倉永左平太('63版では嵐寛寿郎)が見ものであり見どころである。昔日の東映京都撮影所の息吹を伝えることのできる唯一の生き証人として、この御方の時代劇映画の伝統を一身に背負った所作振る舞いの切れ味とド迫力が支えているといっても過言ではない。
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