運命の赤い糸というものは赤ではなく黒なのかも知れない。ここで出会う「自殺しそうに見える」小池栄子と、一家三人を皆殺しにしながら逮捕の瞬間にテレビ局を招き、キャメラに向かって笑ってみせた豊川悦司がその見えない線でつながる瞬間の映画的密度の高さ。
一見理不尽のようで、我々が現代に於いてこの理不尽に否応無く向き合わされていることは、今日も昨日も新聞を開き、テレビを点ければ自明だ。この映画が優れているのは、個人の内的な風景や心象というものをしたり顔で決めつけたところで何の解決にもならず(そしてしばしば的外れである)、増して死刑を罰としてではなく、希望とする犯罪者の、その死や生は一体いかなる意味があるのか、というところに踏み込んでいる点だ。これを訳の分からない破綻者達の身勝手、と捨て置けないのが「いま」なのだ。
ガチャガチャとCGを振り回す無機質なお笑い映画たちの瓦礫の中で、この慎ましくも寡黙なスーパー16ミリ(だと思う)の映画が提示する世界は、ナイフの刃の如く光を放っている。スタスタと、何ということないのだが、絶妙の距離感で道を歩く小池栄子と仲村トオルのショットが素晴らしい。今年随一、だが心して臨んで。
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